国民年金対象者の4割が保険料を未納 年金制度の空洞化

 社会保険庁は24日の社会保障審議会年金部会で、自営業者らが加入する国民年金の保険料を納めなかった人の割合を示す2002年度の未納率が、過去最悪だった前年度の29.1%から8.1ポイント上昇して37.2%へ大幅に悪化したと発表した。未納額は1兆円に上る計算だ。
 未加入者を含めると、本来の国民年金対象者の4割が保険料を納めておらず、「国民年金の空洞化」が進んでいる実態が浮き彫りになった。空洞化の進行が、年金不信に拍車をかけることは必至。04年の年金制度改正に向けた政府、与党の議論にも影響を与えそうだ。

 厚生労働省、社会保険庁は8月1日付で坂口力厚労相を本部長とする特別対策本部を設置。今後5年で収納率を80%に上げることを目標に、免除制度の見直しや保険料の強制徴収実施に向けた法整備などを検討する。 厚労省は未納率上昇の理由について
(1)02年度から市町村が行っていた保険料徴収事務を国に移管した
(2)所得が少ないなどの保険料全額免除者を絞り込んだため未納者が増加した
(3)長引く不況ーと説明するが、根底には深刻な年金不信がある。02年度の保険料全額免除者は前年度277万人から144万人にほぼ半減。この措置で納付対象者は1,683万人から1,836万人に増えたが、前年度に全額免除されていた人の未納率は85.5%に上った。年代別では20歳代の未納率が高く、20ー24歳が52.6%で最悪、25ー29歳も50.6%で5割を上回った。都道府県別では沖縄県が61.3%で最も高く、長野県は26.1%だった。
国民年金 最悪の未納率
 社会保障審部会 税方式の導入求める意見も
社会保障審議会年金部会は24日、自営業者らが加入する国民年金の2002年度未納率が過去最悪の37.2%と報告されたことを受け、消費税を財源とする税方式の導入など抜本的な対応を求める意見が相次いだ。厚労省は04年の年金改革に向け、上限を設けて保険料を徐々に引き上げる保険料固定方式を検討しているが、未納が増えれば保険料収入が減り、保険料率を一層引き上げなければならなくなる。国民年金の「空洞化」は、厚労省の改革案をも揺るがす問題だ。
 部会では、連合の小島茂生活福祉局長は「社会保険方式の維持は本当に今後も可能なのか」と疑問を投げかけた上で、税方式への転換を求めた。日本総合研究所の翁百合主席研究員は「所得に応じて保険料を納める所得比例年金の導入を考えていく必要がある」と述べ、月額13,300円の定額保険料方式をとっている国民年金の問題点を指摘した。厚労省は差し押さえなどの徴収対策強化を指示したが、徴収コスト増大を懸念する委員が多かった。山崎泰彦神奈川県立保健福祉大教授は「未納者には運転免許証やパスポートを交付しない、というぐらいの対策が必要だ」と主張した。

高まる負担感 見直しは必至
 未納率37.2%という国民年金の空洞化は、長引く不況下で保険料の負担感が高まっていることを示しており、公的年金財政の在り方の見直しは必至の情勢だ。今後は、所得に応じた保険を支払って給付を受け取る所得比例年金の導入や、消費税で広く薄く財源を負担する税方式の検討を避けて通れない。
 だが、厚生労働省は2004年の年金制度改正に向け、将来の保険料を20%を上限として徐々に引き上げていく保険料固定方式を検討。保険料アップを想定しているだけに、未納に拍車がかかる可能性もある。国民年金の保険料は月額13,300円。夫婦2人分だけでなく、子どもの20歳以上の学生の保険料を負担しているケースもある。家族3人分なら年間約48万円。企業が保険料を半分負担する厚生年金加入のサラリーマンと比べ、すべて自腹で賄う自営業者らの負担感は大きい。厚労省、社会保険庁は強制徴収も検討しているが、強引な取り立ては問題の解決には必ずしもつながらない。保険料の支払い免除を厳格化した結果、かえって未納が増えたという苦い「教訓」にも学ぶべきだ。(信濃毎日新聞 03.7.25)


国の借金、781兆円に=1人当たり612万円−04年度末
 財務省は24日、国債や借入金など「国の借金」の2005年3月末の残高が781兆5517億円になったと発表した。前年度末と比べ78兆4038億円増え、国民1人当たりでは約612万円の借金を負っている計算となった。(時事通信)

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