仁科神明宮の神事
 
1 仁科神明宮の神楽
仁科神明宮では、例年春祭りの3月15日に古式作始めの神事を行い、秋祭りの9月15日に神楽が奉納される。神楽の由来は明らかでないが、以前は1月14日、5月14日、9月14日に湯立ての神事が行われた。その際、湯立祝は神楽殿で湯立神楽方と湯立神楽を行ったといわれている。湯立神楽は例祭のほか、吉凶事や雨乞い、事変のときに行われたが、一時中断し、明治維新後、神楽社中によって再興伝承され、氏子の神楽保存会によって続けられている。
 神楽は神楽殿で行われ、演目は・剣の舞(一人舞)・岩戸神楽・水継・五行の舞(五人舞)・弊の舞(一人舞)・竜神神楽・道祖神ーの7座からなっているが、明治以前に
はこのほかに大蛇の舞があったという。いずれも面をつけて扮装した舞方が、笛6、太鼓1、小太鼓1の楽器による囃方の奏楽や謡曲に合わせて舞う。
 「剣の舞」は双手に長い刀を持って舞う一人舞で、「岩戸神楽」は祭神の天照大神の岩戸隠れの神話を謡曲によって演じ、尉、弊の神、天うずめの命、手力男命、天照大神が登場する。
 五行の舞」は五色の面と装束をつけた5人の神(中央が黄色の土の神、東方が青色の木の神、南方が赤色の火の神、西方が白の金の神、北方が黒色の水の神)によって舞われる。
 「水継」は尉と姫が高天原から真名井の水を申しおろし、御湯神楽を奏する簡単な劇的な美しい舞である。
 「弊の舞」は右手に弊を持って舞う簡素化された祓の舞である。「竜神神楽」は神話の山彦、海彦の物語りによる神明宮の代表的神楽で、前段、中入狂言、後段、竜神の舞の4場面から構成されている。
 「道祖神」は謡曲によって、ぞうぎと大宝の問答に動作を伴わせた勇壮な舞である。剣の舞、五行の舞、弊の舞以外は、謡曲によって舞われ、古風で簡素、優雅である。また、岩戸神楽は出雲神楽の系統、水継は湯立神楽の芸能化されたもの、弊の舞は吉田流神楽の
系統が混在している。特に、出雲流神楽と思われる古い芸能の型を残していることは興味深い。

2 古式作始めの神事
伊勢神宮では2月9日(現在は3月15日)の祈年祭に作始め(御田植)の神事が行われているが、神明宮でも春祭りの3月15日、古式作始めの神事を行っている。


大町市の主な史跡と文化財

村人の祈りが聞こえる

信州ふるさと通信
インターネット安曇野
azumino@cnet.ne.jp