善光寺平のまつりと講 刊行にあたり

  
 昭和50年代に長野市の石造文化財悉皆調査を行った折りに、各地域に素朴な民間信仰が今もなお続けられ、伝えられていることを知りました。
日本人の長い歴史のなかで育まれ、民衆の生活の中から生まれてきた民俗的行事は、人々の心の底にある信仰心のあらわれでありましょうか。まつりは季節の暦であり、生活そのものでした。昔ながらの形式で続けられているさまざまな年中行事も、時代の推移とともにかたちを変え、失われてしまうことを考え、地域の古老から聞き取り調査をして次の世代に伝えることが大切だと思い、昭和56年から郷土を知る会全員で民間信仰の聞き取り調査を始めました。
 その後昭和60年に専門部をつくり、23人の部員が手分けをして長野市内全域に足を運び、その地方に伝わるまつりや講などの行事に自分たちも参加しながらお年寄りから話を聞き、記録をしてきました。調査を進める中で集落のぬくもりを感じさせるこれらの行事を本にまとめたいと思い、会の20周年記念事業として取り組むことになりました。調査の内容は善光寺平に伝わるまつりや講などの行事と伝承の聞き取りで、その数、350例の中から紙面の都合もあり60例の行事を取り上げて本に載せることになりました。女性たちで、専門的な知識もなく進めてきた仕事ですが、編集を計画した後もさまざまな事情から作業は思うように進まず、遅れに遅れてやっと今刊行をみるにいたりました。
 長い歳月をかけようやくまとめたものですが、広い地域のことゆえ調査洩れや説明不足のものもあり、また不備なところもあると思いますが、その点はお許しいただきたいと思います
 調査終了後に、内容も聞き取りをした当時のものとは変わってしまったり、現在行われていない行事もあると思います。この10数年の歳月は環境を変え生活様式を変えてきましたが、今でも絆を大切にしながらふるさとの中で暮らしている人が多いと思います。
 今回の調査にあたり、各地域の方々から暖かなお力添えをいただきましたことを心から感謝いたします。本に掲載の写真は調査員の撮影によるものですが、一部は所蔵者や協力者から提供を受けました。
 なお、刊行にあたりましては、信州大学の牛山先生に何かとご教示を賜わり、お忙しい中を序文をいただきましたことを厚くお礼申し上げます。
                      平成10年3月
                                    編集委員

  民間信仰聞き取り調査専門部

  飯沼 千満子  斎藤 繁子  徳武 美和子  堀  義子
  内田 久子   佐藤 美佳  戸谷 久江   松峯 房子
  岡田 幸子   白澤 昌子  梨本 ひさ子  松本 節子
  工藤 和枝   竹村 登志子 野澤 マサ   宮入 鶴子
  小林 澄江   田中 幸子  羽場 貞子   山本 恒子
  近藤 澄枝   遠山 美智子 藤澤 和子


善光寺平のまつりと講 目次

信州ふるさと通信
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