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新・信州人倶楽部


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第31号

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〜キュイエール・ダルジャンのこと〜

中澤 滋

 前号「よりましょ」でSさんの自己紹介文を掲載させていただいたとき、ちょっと気になるところがありました。それはキュイエール・ダルジャンのことなのです。実はもう3年くらいなるのでしょうか、私達はあの店がオープンしてすぐの頃訪れたことがあったのです。知人に「ケーキがおいしい」といわれて行き、昼食を食べたのですが、特にこれといった感激もなく、その後訪れていなかった店なのです。鮮魚コーナーがお気に入りの「スーパーTERA」には週2回ほど行き、駐車するときに「ああ、まだあるな」くらいの関心はありましたが…。

 それでもSさんのべた褒めの言葉に、「そうか、最近は良くなったのかな?」と行ってみたのです。それは7月7日の日曜日でした。 2人とも夏限定のランチから別々のものを選んだのですが、結論からいうとあまりにもお粗末な味にビックリ、会計後に店の人に5分ほど長々と各料理の問題点を指摘してしまいました。

 Sさんにことの次第を報告したところ、「そう言われればそうかも知れない。簡単な気持ちで書いてしまったので、中澤さんのコメントを会員にぜひ紹介いただきたい」とのお返事をいただき、今回その体験談を披露することにしました。

 まず、女房のランチですが、ラタトゥイユ風のスープにパスタが入ったものですが、インスタントのクノールコンソメに甘みのない野菜が入ったスープ(おそらく市販のカット野菜のようでした)で、素人以下の出来でした。ビックリしたのはチーズと何やら香りがしない野菜か挽肉のようなものを包んだパスタ(トルテッリーニ?)で、これがもさつくのです。火の通りが悪いのか冷凍なのか分かりませんが、味もなくてぼそぼそのガムを噛むようなものだったのです。スープに味があればいいのですが、スパイスもハーブも使わずに、さすがの女房も私を見ながら思わず何か訴えたのです。私も食べたのですが、これはお金を頂戴すべき品でないことはすぐに分かりました。

 一方私のランチは、まず「海の幸サラダ」と称するものがきたのですが、期待してフォークを入れてみると、盛り上がったレタスの下になにやら魚があります。食べてみるとカジキマグロの刺身であり、それはそれほどまずくはなかったのですが、それが4切れ、そして終わりでした。見るとディッシュには塩がバラバラかかっており、濃い塩とオリーブオイルのくどい味だけなのです。何ということでしょうか。私の人生で「海の幸」という言葉は、どんな居酒屋であっても数品の、いわゆる“海の幸”、つまり魚、エビ、ホタテ、海草、などが入っているものです。それをカジキマグロだけで、幸せになれるものと思っているのでしょうか?このレストランは。

 次はメインですが、女房の皿には豚肉のヒレにホウレンソウをあしらい、クリームスープ(ソースというよりスープみたいでした)をかけたものでした。それに例のパスタがまた入っているのです。食べた瞬間、彼女の顔が暗〜くなりました。

 私が少しもらったところ、パスタは例によりまずい、の一言。それよりも豚肉が臭いのです。まず肉がそれほど新鮮でないことが分かりますが、繊細な味を引き出すクリームソース仕立てにするときは、豚独特の臭いを消すのは当たり前のことです。ニンニクやハーブを使ったり、小麦粉をまぶしてソテーしてから他の具材とあえるなど、料理を少々作る素人でも常識なのにどうしたことでしょう。

 ホウレンソウと豚肉を一緒にバターで炒め、それにクリームスープ(これがまたバターの香りがほとんどないのです)を加えてパスタを放り込んだのでしょう。メニューにはバジル風味、と書いてありましたが、この時期豊富なフレッシュバジルがあるというのに、乾燥バジルを後からぱらぱら振りかけただけなのです。

 私の方は鶏肉のアーモンドかりかり風味、というもので、生焼けの野菜のグリルにアーモンドが載った鶏もも肉でした。鶏肉は味はないものの、まあ食べられましたが、野菜がいけません。ズッキーニやパプリカは良いとしても、タマネギの焼きが甘いのです。これでは野菜のうまさが全く出ずに、歯ごたえと嫌みな味が残るだけです。

 そしてパンは昨日の残り物を今オープンで温めたような、もさついたまずいパンで、水分がなくてバターなしではとても食べられないものでした。これではヤマザキパンをトーストにした方がまだましかも知れません。(山崎製パンはもう10年くらい食べていないので、正確な言葉ではないかもしれませんが…。)いい加減呆れて、私が「出ようか」というと、女房が「まだコーヒーがあるのよ」というのです。早くこの場を出たくてしょうがなかったのですが、待つこと7、8分、コーヒーと紅茶がきました。コーヒーは少々煎りすぎの感があるものの、まあ飲めないことはなく「今日のランチではまあまともな方だな」と思ったりもしました。

 しかし我が女房はイヤな顔をしているのです。聞くと、カップの下に何やら黒いつぶつぶがたくさん淀んでいるのです。まるでティーバッグの中の滓が出てきたようで、香りが全くないというのです。それでもミルクと砂糖を入れて飲んだのですが、そんな彼女を見ていて、カップの内側に縦にひびが入っているのを私が見つけて知らせたのです。彼女には死角になっていて見えなかったのですが、私がさらにいうと外側をながめて、「まあ、外側にもあるわ」というのです。何ということでしょう。紅茶を入れるときに、もう既に茶色くなっているひびが分からないはずはなく、この店の鈍感な体質、つまりお客に提供する味に対する心遣いの根っこが見えたのです。

 会計後、担当に「ここのシェフは変わったのですか?」と訪ねたところ、開店当初から同じ人だというのでこれまたビックリ。前来たときはこれほどまずいという記憶がなかったからです。最近の「Nao」とかいう雑誌やタウン情報、といったものに出てくる店に名を連ねているだけのことはあります。味はともかく一見おしゃれ風であればいい、というそんな客に受ける店なのです。いつもはバカにしているファミリーレストランの中にはもっとまともな味の店もありそうです。でも“おしゃれ”というだけの店(中身の伴わない見かけだけ“おしゃれ”で、料理・味の品質に関するセンスのない店)に人が群れているというのは、食を楽しむのではなく、そのような空間にいることで自己満足する価値判断が横行していることでもあります。まあ、いいように宣伝に躍らされれている、ということでもありますが…。



第25回例会のご案内


第24回例会報告


〜おいしい味を、少し〜


中澤 滋

 今回もまた長野情報です。長野に住む娘を持つ知人から話を伺い、善光寺門前にあるレストランに行って来ました。

レストラン五明館

 善光寺郵便局とともに歴史的建物として保存されている建物に五明館はあります。永らく宿屋をやっていたのをレストランにしたもので、店内は落ち着いた雰囲気で、接客もきちんとしすぎるほどで、まるで由緒あるホテルのようです。味は正統派の洋食屋さん、という感じで誰にでも受け入れられるものです。

 メニューにはほとんど1,200円の定食が10品ほど並び、少し迷ったものの、私が「五明館のお昼ご飯」(1,400円)、女房が「オムレツ定食」(1,200円)を頼みました。程なくでてきた私の定食は、充分時間をかけて煮た豚の角煮とお刺身(マグロ、ヒラメ、エビ)、ワカメと野菜をゆばでくるんだ酢の物、漬け物そしてみそ汁・ご飯でした。角煮は柔らかく脂のくどさがないもので、味付けも大変良く、お刺身はそれぞれの素材がフレッシュで、マグロは赤身の良い部位をおいしくいただきました。

 「オムレツ定食」は人気のようで、私達の後から来た他のテーブルの人も数人オーダーしていました。その定食はオムレツとサラダ、それに私と同じ酢の物、漬け物にみそ汁とご飯です。

 何と言ってもオムレツのジューシーなふわふわ感がたまらない一品が魅力で、この店の人気商品であることが分かります。豚挽肉の軽くて居心地の良い風味が甘さを感じさせて、それはおいしいものでした。単品でも850円ですから、ここは定食がお奨めです。善光寺方面に行くときは、ぜひ立ち寄ってください。電話は026-232-1221で、水曜日が定休日です。




 さてお腹も満足して店を出ると、隣の郵便局の一角に「木の花屋(このはなや)」という漬け物屋さんがありました。ちょっと感じのいい店
で、のぞいてみると、しょう油漬け、味噌漬けやピクルスなどの酢漬け、佃煮、ザワークラウトなどが置いてあるのです。試食品は十数種類もあり、色々試しましたが、どれも素直なやさしい味がするのです。佃煮も漬け物も塩味やしょう油味が勝るのではなく、野菜の香りと甘さを味わえるものばかりなのです。聞くと麻績村にある自社の農園で育てた有機栽培の野菜を使っているとのことで、そのやさしい味に納得。ここ数年信州の漬け物はあまり買わなくなっていたのですが、知人に送る分と自宅用に6袋も買ってしまいました。また葉とうがらしの漬け物はスパゲッティとの相性が良い、というレシピがあり、なんとなく味が分かる気がして近々トライするつもりです。

 この店には漬け物以外にも小さな小物が多く揃えてあり、お手頃な値段と質の良さにいくつか買ってしまいました。お弁当用の丁寧に作られた、ちょっと渋めの布製巾着が何と350円、というのはビックリ。今では女房のお弁当のお供になっています。お店の店主は押し売りしない素直な自然体の女性で、好感度はなかなかのものでした。今回は「木の花屋」、という大きなおまけが付いたので、私達は大満足で帰路の車中でもその余韻に長く浸っていました。
木の花屋の電話は026-252-7001です。



〜信州方言一刀両断 〜

E.K.

 信州は山国だけあって独特の食文化がある。ザザムシはその際たるものだが、その他に蜂の子やイナゴなど蛋白質を昆虫に求める姿勢は、将来200億にも達しようかとする地球人類の食料危機を救うヒントが含まれているかも知れない。TVなどのメディアではゲテモノ食いとか珍味紀行などが放映されるが、その土地に生まれ育った人にしてみれば、この食文化は気候・風土・生息動植物を上手に利用した生きる知恵であり、生物としての人間の本来あるべき姿を素直に表わしているものだろう。

 ザザムシは川に生息する水生昆虫のトビケラの総称である。主にきれいな川に生息している。川の環境を調べる指標生物ともなっている。

 話は横に逸れるが私は地元の子供たちとこのカワゲラやカゲロウ、カワゲラなどを調べている。特に孫太郎虫(黒焼きにして疳の虫に使う)と呼ばれるヘビトンボの幼虫を発見できたときは感激である。
ハチの子は正式には地蜂(スガレ・クロスズメバチ)の幼虫をいうが、市販されているものは蜜蜂の幼虫のことが多いようだ。地蜂の巣は山と畑の境にある土手の斜面に作られることが多く、地中にあるため人目には付きにくい。この巣を見つける方法は独特である。庭先や巣のありそうなところの近くに真綿をつけた鶏肉を置いて置く。そこに肉食の地蜂がやってきてこの鶏肉をさらって巣に飛んでいく。
 
 地蜂はスズメバチとは言ってもオオスズメバチとかキイロスズメバチ(くわんばちと言う)とは違い小型で色も黒くて薄暗い林の中では保護色となり見つけにくい。白い真綿はこの目立たない地蜂の飛行を見事に描き出す。それを見失うまいと必死で追いかけるのである。この行為を「スガレ追い」と言う。

 蜂は道に沿って飛ぶわけではないので、藪の中や崖、川もお構いなしに巣に直行である。追う方はそれこそマラソンランナーのラストスパートの様な息遣いであり見ているほうから言わせれば滑稽そのものである。巣を見つけると煙幕(市販されている)を使い蜂を一時ショック状態にさせ、そのあいだに巣を掘り出すのである。巣は平たいお皿が何段にもなった状態でその中に幼虫が入っている。蜂の子はそのまま食べたりフライパンで煎ったりして食べる。養蚕が盛んだったころは蚕や蛹も食べたという。蚕は仕事をしながらあまり成長が良くないものをぱくりと口に放り込むのだが、蚕は生活の糧だからそんなにしょっちゅうではなかったらしい。しかし、蛹は繭をとった後のものだからそんな心配はない。丼に山盛り甘辛く味つけて食べるのだそうで、うまいということだが、養蚕をいまだにやっている当地でも、まだその食感には巡り会えない。

 極めつけは蛇だろうか。俗にシマと呼ばれるシマヘビはうまいそうで、鰻の白焼きのようにして食べる。ただ骨が固いので多少たたきの様に骨を砕く。まむしに関しては全国的に知られているが焼酎漬けにして、飲んだり打ち身に利用する。

 今回は方言と言うより食文化になってしまったが、食べ物に関しては書くことが山ほどあるので次回もこれで行くぞ。乞うご期待。



編集人から

 台風がもたらしたのか、お盆過ぎの冷たい秋風が突然に夏日の来襲。最近は穏やかな気象から極端な気象になっているようです。

 そういえば欧州を襲った大洪水では、治水対策のことをクレームする人 はほとんどいないと聞きます。災害は必ず起きるもので、問題は災害から国民生活を復興させるシステムの善し悪し、ということのようです。100年に一度の洪水被害を防ぐために、莫大な予算を平気で使う国もあるのに…。自然を治めるなどの思い上がりの結果、国の予算が公平に使われず、先進国では当たり前の電線地中化もできず、途上国と同じゴチャゴチャの景観には滅入るばかりです。宣伝看板の規制もできず、業者の利益優先のセンスのない国になっています。あ〜あ。

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