Iターンネットワーク

新・信州人倶楽部


▲▲▲ 新・信州人倶楽部報 ▲▲▲



第29号

●●● ●●● ●●● ●●● ●●● ●●● ●●● ●●● ●●●

〜安曇野に来て1年〜

鈴木 寿紀

 先日、上記命題でなにか書くように言われて、正直戸惑いました。回想する気持ちがなかったのです。いまだに観光客気分で毎日を呑気に過ごしているせいでしょうか。あるいはここに移ると決めた時に想像していたものと、いま現在にそんなに違いはないということでしょうか。

 でも言われてみれば、昨年の1月、定年を契機にそれまでの都会生活におさらばし、「自由の天地」を求めてこちらに引越してきたわけです。

 「第2の人生を信州で」と言ったら、周囲から「よくそんな寒いところへ行くなあ」とか「すぐまた戻って来るさ」とか言われたもの。確かに、それまでの37年間の会社勤めは、高度成長の波に乗って(少々悪乗りしすぎて今そのつけが廻ってきている)、激烈ではあったがやりがいもあり、それなりに楽しく、不満のない人生でした。土木屋でしたので、社会に貢献する構造物を造っているという自負もありました。ですから、これまでに築いてきた身に合った雰囲気や、苦労を伴にした仲間と別れるのはたいへん辛いことでした。

 しかし、人生は一度っきり。今までとはまったく違った生活を味わいたい。それには環境を思いっきり変えてしまうのが良い、都会のスモッグと騒音から、そしてもろもろのシガラミに煩わされる過去から逃げるにしかずと考えての決断でした。信州を選んだのはやはり自然環境の素晴らしさ。四季の移ろいをはっきり感じとり、その折々の自然の中でゆったりとした時の流れを楽しむことができると思ったのです。

 安曇野はこの私の期待を裏切りませんでした。樋口忠彦氏は「盆地の風景が日本人が心に抱くふるさとの基本形」と言っていますが、確かにこの盆地の景観は人の心を平穏にさせるものを数多く持っています。神々しいばかりの北アルプス連峰を背景に、のどかな田園がひろがり、積雪時の墨絵の世界、一斉に咲き出す花々の競演、木々の芽吹きと新緑、森の中のそよ風・美味しい空気・きれいな川、たわわに実る果樹園、色鮮やかな紅葉と次々に好きな風景が現れてくるのです。どこかへ出かけてここに帰ってきた時、心がほっとするのは、私にとって今まで縁の遠かった「ふるさと感」が味わえるばかりでなく、この安曇野のかもしだす一大ハーモニーのせいではないのでしょうか。

 私達は家を穂高町有明の富士尾山のふもとの別荘地に建てました。山懐に抱かれて、赤松林に囲まれた俗世間から外れた場所なのです。静寂の中で自然の息吹に身を浸していると、時折時間が止まったような感覚におちいります。自然がもつやすらぎ、癒しの力はやはりすばらしかった。
生活面も車の運転さえできれば、問題ないように思います。買い物も高級志向でなければ近くに大型スーパーが沢山あるし、食事も都会からきた人が開いている店も多く、かなりの味を提供してくれます。またご存知のように、この地には文化や歴史もあり、絵画・彫刻や音楽の鑑賞には事欠かず、古代や中世のロマンを感じさせる遺産もあって、結構楽しめる場所も多いのです。有明にある「書翰集」というカフェのコーヒーはちょっとそこいらにはないほど美味しく、ジャズを聞きながらの至福の時を提供してくれます。

 私どもはこちらに来て、蕎麦屋めぐり、お花見、山歩き、そして名所旧跡・神社仏閣・美術館・温泉等を訪ねてあっちこっちさまよっているうちに、あっという間に1年が経たってしまいました。きっと時間を持て余すだろうから、じっくり系統立てて本も読めるだろう、それから本当に自分に合ったことを見つけて熱中していきたいなどと欲張ってはいたのですが、どんどん先延ばしになっていきそうです。いまだに庭の手入れ、裏山の整理も中途半端な状態なのですから。

 最後に一言。懸念していた友人離れですが、結構遠くから訪ねてくれる友人も多く、またこの新・信州人倶楽部で知り合ったよき仲間との交流もあり、孤独感とやらは味わう暇さえありません。万物に感謝します。(了)


第23回例会報告



第24回例会のご案内


会員紹介


〜おいしい味を、少し〜


中澤 滋

 今回はお店の紹介ではなく、私がよく作る韓国風ピリ辛のたれと中華風の辛みその作り方を教えましょう。韓国風ピリ辛のたれは、今まで数回の例会でバーベキュー用の特製だれの基となっているもので、その味の良さでは皆さん納得していただいています。また中華風の辛みそは会員の方や知人のリクエストもあり、紹介するものです。総会のときに、はんぺんの上に載せて焼いたものを食べた方もいると思いますが、あのみそがそうなのです。

韓国風ピリ辛たれ

 材料はコチュジャン(大さじ4)、みそ(大さじ2)、しょうゆ(大さじ1.5)、すりおろしたニンニク(小さじ2)、しょうがの絞り汁(小さじ2)、砂糖(小さじ1.5)、白すりごま(大さじ1)、酢(大さじ2位)です。なお作り方は、NHK「今日の料理」で紹介されたジョン・キャンファのレシピを参考にしています。私はこれら材料のうち、味噌は長野市にある、すや亀の「大吟醸みそ」と、お酢は京都にある村山造酢の「千鳥酢」を使っています。どちらも松本周辺で入手できますので、試してみてください。

 さて、このたれにアジなど刺身用の鮮魚を浸してご飯に載せ、そこにシソ、ミョウガ、キュウリなども添えて食べると、とても美味しいのです。韓国風海鮮丼とも言えるものですが、素材の味を大切にするたれなので、松本あたりの店ではこの味は出せないと思います。またバーベキュー用の“つけだれ”ですが、このたれに酢を混ぜて少しゆるめにし、砂糖と白すりごまを入れれば完成です。辛いのが好きな人は砂糖を少なくすればいいので調整は簡単です。焼肉店や市販のたれの味に慣れてしまっている人には、この辛いけれど優しい味は別世界のものに思えるかもしれません。

中華風肉みそ

 材料はまず豚のミンチ300gですが、これは挽肉をお店で買うのではなく、好みの肉の部位を買ってフードプロセッサーでミンチしてください。食感と味にここで差が出ます。包丁で細かくたたいてもそれほど時間はかかりません。肉の部位もロース、もも、肩ロースなどで好みの味を楽しむことができます。肩ロースとモモのブレンドでも良いです。
そのほかの材料は、みじん切りのニンニク(大さじ1)、みじん切りのしょうが(大さじ1)、豆板醤(小さじ1)、砂糖150g、みそ500g、バルサミコ酢(大さじ1)です。なお、作り方はNHK「今日の料理」で紹介された斎風瑞さんのレシピを参考にしています。味噌は塩気の多いものよりも、先ほど紹介したすや亀の味噌を利用することをお奨めします。奥深い上品な味わいを出すには、素材にもびせ気を使ってください。
作り方は、中華なべを良く熱し、煙が出るようになったら油を回し入れすぐに油入れに戻します。そのなべに残った油で豚肉を入れて固まりが無くなるように炒めます。みじん切りしたニンニクとしょうがを加えてさらに炒めます。つぎに豆板醤を加えて全体に良くなじませてください。砂糖を加えて炒めます。砂糖が溶けたらみそを入れてさらに炒め、全体がなじむようにします。水カップ3を少しずつ加えて溶いていきます。材料が均一に混ざったら、塩(小さじ1)、バルサミコ酢(大さじ1)を加えてさっと混ぜ、表面に泡がプツプツ出ている状態を保つよう火を弱火にします。鍋底に焦げ付かないようにときどき全体を混ぜながら1時間30分位煮詰めます。ここが少し根気のいるところですが、くれぐれも焦がさないよう気をつけてください。水分がだんだん飛んでいき、みそに近い堅さになったら火を止めて出来上がりです。この最後の仕上げだけは慎重にしてください。肉みそは保存容器に入れておくと、冷蔵庫内で2カ月から3カ月間持ちます。

 肉みそは、まずそのまま温かいご飯に載せて食べてみてください。微妙なうまみや食感のハーモニーが楽しめます。また野菜炒め、チャーハン、麻婆豆腐などに適宜使うことで、簡単に深みのある料理に変身することができます。いつでも冷蔵庫に置いておける常備菜があると、とても重宝なものです。



〜信州方言一刀両断 〜

E.K.

 信州は地域のつながりが強い。隣組はもちろんのこと、同姓(これは親戚とはまた別である)、同級会、お庚申(昔は、かのえさるの日に行なった忌み禁じの行事とする信仰で、葬儀の時の墓掘りも請け負う一種の講)、無尽(仲間打ちで行なう抽選による利息のつかない金銭の貸借)若妻会、戸隠などの講、たんぼの水利組合や消防団など数え上げればきりがない。

 都会は「殺伐として隣に住んでいても挨拶もしない」とよく言われるが、あまりにつきあいがありすぎるのもいただけない。この信州の地縁血縁を大事にする風土は、山国の内陸的な風土の中で食料を基本とした物資の乏しさが助け合いの仲間(結)を形成し、交通網が発達し豊かになった今も形を変えて存在し続けているのだと思われる。    
ところが、これだけ仲間意識がある信州人だが、個々に話を聞くとその仲間の悪口が多いのに驚かされる。逆に考えれば普段悪口を言っている人でもいざ有事となれば結束するということでもある。「村八分」と言う言葉があるが、これは何もまったくつき合いをしないというのではなく、八分だけ疎外して後の二分については助け合うということだそうだ。それだけつながりがあり続けるということだろう。
 
 前置きが長くなったが、この信州人の裏と表を表わすように方言にも他人を非難する時に使う言葉が多い。あまり人をほめる方言は聞かない。「らちもねえ」「芸もねえ」「ごさわく」「ごった」「悪つく」「知らすけ」などはほ んの一例である。

 「らちもねえ」「芸もねえ」はほとんど同じような使い方で、人が無駄なことをしているようなときに使う。こつこ つやっている人を中傷するときにも使う。コミさんは台風で崩れた土手を直しているが、あそこは何度直してもまた崩れるで「らちもねえことしてるわい」と言うように使う。
「ごさわく」は「ごーさわく」とのばすこともあるが、他人に嫌がらせや悪口を言われたときに腹が立つ気持ちを言ったもの。隣のじっさは、俺がせっかく採ろうと思ってたタラの芽を夜中にこっそり採っていきやがった。「まったく、ごーさわく」と言うような言い方をする
「ごった」はその時々でさまざまに使われるが 、一言で言えばごちゃごちゃして収拾がつかない様をいうが、これも物が散らかっている様子もあれば、人の行動が目茶苦茶なときも使い、割と頻繁に自己や他人の行動に対して用いられる。「まったく今度の幹事はごっただで」などと言う。
「悪つく」は悪口を言うことで悪こくとも言う。いたずら坊 主を「あくたれ」と言う。「知らすけ」は「知らない」と言う言葉ではあるが、潜在意識としては「そんなの聞いてねーぞ」と言うのが含まれる。「…すけ」の活用としては「出来すけ」出来るわけねーだろう。「いけすけ」ダメだ。「あらすけ」あるわけねーだろう。などがある。いずれにしてもなれてしまえばそれほど感じないが今回紹介したのは乱暴な言い方に入る。非難するばかりでは片手落ちなので、次回はフォローの意味で信州人の優しい言い方の考察をしたいと思う。



編集人から

 まだ4月なのに桜は終わり、ハナミズキやドウダンツツジが咲いています。柔らかい新緑の色であたりが明るく、わが家の庭でもモズが巣作りを始めたようです。おかげで小鳥たちはモズに追い立てられています。シジュウカラはたまにしかこないのですが、それでも先日はシメが来ていました。今朝はキジバトがハナカイドウの花か、つぼみなを食べていました。

 遅霜が心配ですが私も市民農園での作業を開始しました。収量は少ないものの、雑草と共生する完全無農薬有機栽培で、今年も美味しい野菜作りに励むつもりです。

●●● ●●● ●●● ●●● ●●● ●●● ●●● ●●● ●●●

会報目次

みんなで発信おたより紹介今までの活動の紹介新・信州人倶楽部に興味のある方へ
TOPページ

●●● ●●● ●●● ●●● ●●● ●●● ●●● ●●● ●●●

Google